吃音 the mic プロジェクト

マチーデフ
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TURN交流プログラムに参加しているラッパーのマチーデフは、吃音 the mic(キツオン ザ マイク) というプロジェクトを今夏に実施しました。吃音症(*1)の人が発話の際に行っている工夫と、ラップの歌唱法に親和性があるのではないかというマチーデフ自身の気づきから、吃音症の人々とラップに挑戦するプロジェクトです。

30代までの若い吃音当事者による自助グループ「うぃーすた」関東グループと協働して実施したワークショップの様子をこのページにて順次紹介していきます!

(*1)吃音症:話し言葉が出てこない症状

実施協力:うぃーすた関東
リサーチ協力:吃音ラボ、東京言友会


吃音×ラップの可能性

「リズムを取りながら話すと言葉が出てきやすいんです」
たまたま見た動画の中で吃音当事者の方がそう話していて僕はハッとした。
リズムを取りながら話すって、それほぼラップじゃないかと。
もしかして吃音症状の軽減にラップは向いているのか?
そういえば吃音を持ったラッパーやアーティストも何人かいるし、吃音とラップは何か関係があるのかもしれない。
そう思って僕はこのプロジェクトを始めることにしました。
とは言え、吃音当事者でもない僕が、そんな思いつきだけでいきなり症状の軽減だとか仮説を並べるのは早合点が過ぎる。
このプロジェクトを始めるにあたり当事者の方にお話を伺ったり自分なりに調べてみたところ、吃音との向き合い方も人によって様々だという事がわかってきた。
だからまずは、このプロジェクトを通して吃音当事者の方と“言葉を発する喜び”を分かち合いたい。
リズムを取りながら話す“ラップ”という共通言語を使えばそれができる気がする。

マチーデフ



ワークショップ3回目(最終回) 2021.7.18

今回は小学生の男の子を含む3名の方が参加してくださいました。

今回のテーマは即興ラップ。
とは言えいきなり即興ラップに挑むのはさすがにハードルが高過ぎると思い、まずはスマホをモニターに接続して、アプリを使ったカラオケ大会からスタート。
もちろんただカラオケをやるわけではありません。
知らないラップの曲を入れて、モニターに映る歌詞を好きなようにラップするという、半即興ラップのような遊びから始めていきました。
徐々にリズムに乗って読む・しゃべる事に慣れてきたところで、いよいよ歌詞も含めた完全即興に移行。

①犬派VS猫派
②遊園地派VS水族館派
③マンガ派VSアニメ派

というお題毎に2チームに分かれて、ラップでディベートを行いました。
が、そう簡単にはうまくいかず…皆さんかなり苦戦しておりました。。笑

最近ではテレビ番組でも見かける事が多くなりだいぶ身近になった即興ラップではありますが、やはり実際にやってみると相当難しかった模様。
後半はちょっとづつ言葉を紡げるようになってきたものの、残念ながらそこで時間切れ。
無念。即興ラップの難しさと自分の力不足も実感しました。

ディベートラップバトルの後、参加者の皆さんとラップで感想を言い合った際の音源がこちらです(イヤホン、ヘッドホン推奨)。
↓↓

そしてワークショップ後には少し座談会も行いました。
こちらもぜひお聞きください。

※参加者の名前を言う箇所はプライバシー保護のためカットしております

この座談会の音源を聞いて、改めて興味深かったのが「吃音の種類によって語彙の引き出し方に違いがありそう」という参加者の言葉。
もしかしたら、それが個々のラップスタイルに影響したりもするのかな、とか思いました。
吃音とラップの重なる部分、まだまだ色々ありそうです。

ということで今回をもって全3回に渡るワークショップがすべて終了。
このプロジェクトを通して本当に多くの気付きを得る事ができました。
この場を借りて参加者の皆さん、ご協力いただいた皆さんに心より御礼申し上げます。
ありがとうございました!
また一緒にラップできますように!




ワークショップ2回目 

第2回目は作詞のワークショップを行いました。
まずはラップの作詞に欠かせない“韻を発想するコツ”からレクチャー。
最初はなかなか韻が出てこなかった参加者も、いくつかポイントを教えるとすぐに韻が出てくるようになりました。
僕はこれまでに何百人という方に同じように韻を発想するコツを教えてきましたが、今回はその中でもかなり飲み込みが早いなという印象を受けました。
その事を参加者に伝えると「吃音当事者は普段から言葉について考える時間が多いので、こういうのは得意かもしれないです。」との事。
吃音とラップにはそんな共通点もありそうです。

韻を発想するコツを掴んだら、今度は歌詞作りに挑戦。
ここでもまた新たな気付きがありました。
作詞の際、ラッパーはより気持ち良いリズムを刻む為に

・同じ意味の違う言い回しを考えてみる
・語頭に音を足して韻を発想してみる

といった工夫をする事が多いのですが、吃音当事者の方は自分が苦手とする発音を避ける為に似たような工夫を日常的に行っているそうで。
↑のような作詞に使えるテクニックに関しても難なく要領を掴んでいたのが印象的でした。

さて、そんなわけで参加者の方が書いたリリック(歌詞)がこちらです。
テーマは「吃音」。

 
 言葉出なくて息がつまる
 シーンと静まりかえるクラス
 ジロジロ感じるみんなの視線
 答えはわかるがこんなの言えん
 のどまで出てるがあと一歩
 真っ赤になってる顔きっと
 手でリズムとり絞り出す
 もう当てないでと祈ります

吃音当事者ならではの視点と思いが込められた8小節に仕上がりました。
次回はラップで会話する、即興ラップに挑戦です!




ワークショップ1回目 2021.7.2

初回は吃音当事者の方2名が参加してくださいました。
最初は少し緊張していた感じもありましたが、リズムに合わせて声を出すうちに自然と体も揺れ出して気持ち良いリズムを刻めるようになっていきました。
リズムゲーム「三連符しりとり」では僕が言葉につまり負けてしまいました…笑

最後は宮沢賢治の「雨ニモマケズ」をビートに乗せて自由に読むという即興ラップに近い事もやってみました。
参加者それぞれの個性、スタイルが光ってて大変興味深かったです。

ワークショップ終了後に参加者の方に感想を伺うと
「ラップをしている時は吃音の症状が出なかった」
「普段、歌を歌う時は吃音の症状が出ないけどラップでも出ないんだなと思った」
といった感想が聞かれました。
皆さんラップを楽しんでいただけたようで嬉しかったです。

次回は想いをラップにする、作詞のワークショップ。
果たしてどんなラップが生まれるのか。今から楽しみです。

マチーデフ
Macheedef

ラッパー、作詞家、ラップ講師
渋谷区生まれ幡ヶ谷育ち、メガネのやつは大体友達。1997年にラップを始め、オトノ葉Entertainmentのラッパーとして数多くの作品をリリース。2014年にソロとなりアルバム「メガネデビュー。」を発表。自主制作ながらiTunesヒップホップアルバムチャートで1位を獲得した。またCM、映画、テレビ番組等のラップ企画において作詞や監修を務めるなど “ラップクリエイター” としても精力的に活動さらに毎週複数の専門学校で授業を行う “ラップ講師(11年目)” でもあり、長年の経験で培った豊富なメソッドを活かしアイドルのラップ指導やAIラッパーの研究開発にも従事している。2019年、13曲入りのフルアルバム「メガネシーズン」を発表

https://www.macheedef.com

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