永岡大輔

  • 参加作家・団体

バンド工房


アーティストの永岡大輔は、2019年よりTURN交流プログラムの一環として渋谷区障害者福祉センター「はぁとぴあ原宿」に定期的に通っています。

ここで永岡が目指しているのは、人と人が深くゆっくりと出会うこと。2020年は、はぁとぴあ原宿の屋上に生えている雑草に着目し、施設利用者(メンバー)と採取した雑草の標本作りやスケッチを行いました。そして2020年末から始まったのが「似顔絵を描く」という活動です。似顔絵は、描く者と描かれる者が互いの眼差しを感じることから始まります。それは社会的な役割を取り払った、存在そのものの出会い。言葉とは違った心の通わせ方を生みだしています。

今回は、はぁとぴあ原宿のメンバーが描いた似顔絵を中心に、交流を通した活動を紹介します。


福祉施設に通えるようになって痛感するのは、その存在と地域やそこにいる人との間にある距離間です。例えば利用者さんと一緒に散歩に行った時、すれ違った人に彼が挨拶をした時に返事はありませんでした。そこにはこの社会の性質もあるのかもしれないけれど、「こんにちは」という挨拶に返事がないという寂しさに対しての理由にはなりません。僕が出会えた素敵な利用者さんたちと一緒に、どうやったら社会と見つめあえるのかを思いました。そこで、このバンド工房は始まりました。まるでライブ演奏をするバンドのように、表現を通じてコミュニケーションをしていくというものです。今回はバンドのメンバーが出会った人の似顔絵を描きます。彼・彼女らの眼差し、そして表現された世界を存分に感じて欲しいです。ちなみに、このバンド工房は似顔絵に止まらず、社会と出会い続ける面白いことをバンド活動としてできたらと思っています。

永岡大輔

永岡大輔
Daisuke Nagaoka

1973年山形県生まれ、神奈川県在住。Wimbledon School of Art修士修了後、国内外にて個展・グループ展による発表多数。
記憶と身体との関係性を見つめ続けながら、創造の瞬間を捉える実験的なドローイングや、鉛筆の描画を早回しした映像作品を制作する。制作の痕跡が意図的に残される作品は作者の記憶ばかりではなく、失われた時間の痕跡としての余韻を空間にもたらす。また、平面や映像作品以外にも、朗読体験を通して人々の記憶をつなげるプロジェクト『Re-constellation』による公演や、現在では、新しい建築的ドローイングのプロジェクト『球体の家』に取り組むなど、様々な表現活動を展開している。

http://daisukenagaoka.jimdo.com

渋谷区障害者福祉センター はぁとぴあ原宿
Shibuya City Welfare Center for Persons with Disabilities Heartpia Harajuku

2008年、渋谷区から委託を受けて開所。障害児者支援施設である。施設入所支援、生活介護(通所・入所)、短期入所、日中一時支援、児童発達支援などの支援を提供している。生活介護事業では、アート活動への積極的参加と、理学・音楽療法などのリハビリテーション支援に取り組んでいる。また、感覚統合とソーシャルスキル訓練を柱にした児童発達支援も行っている。