丸山素直

  • 参加作家・団体

エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパンとの旅

アーティストの丸山素直は、2019年のある日、TURN交流プログラムの一環で「エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン」に赴きました。子供たちとの交流とそこで実施されている美術の授業を通して、美術の授業の在り方や創作する上での大切なことについて、丸山は改めて自身に問いかけました。その経験をもとに、作品を完成させることそのものよりも、プロセスの時間に着目し、豊かな経験に子供たちが出会えるような交流の時間を計画しています。

2020年は遠隔からの交流として、絵を通した文通のようなやり取りを行い、今年度は学校に丸山が赴きながら行う交流を試みています。今回のTURNフェスでは、2020年から試行錯誤してきた交流の様子と、そこで生まれた創作の数々を紹介します。


旅のはじまり

「エベレスト・インターナショナル・スクール・ジャパン」に初めて伺ったのは2019年の秋。場所は東京の荻窪ですが、学校内はまるでネパール。幼稚園生から中学3年生までが、先生たちと家族のような学校生活を送っていました。教室の中では慌ただしく授業が進められています。見学させていただいた美術の授業も、作品を作り始めてから完成するまで15分くらいだったでしょうか。絵描き歌のように、紅葉した木の描き方を最初から最後まで一緒に進めていくので、全員がほぼ同じ作品を完成させました。美術の授業は作品の制作を通じて、工夫する力や観察力、想像力を育むものなので、自分のクラスでは、子供たちのそういった力を豊かに発揮できる仕組みをつくりたいな、と思いました。
2020年2月、小学4年生の美術の授業を企画しました。折り紙を自由に折って切って、偶然できた形から想像して浮かんだ物語を作品にします。教室の中は、自分の物語を発表したい子供たちでカオス状態に。人懐っこい子供たちはとても可愛くて、このまま交流を続けられたらと思いましたが、時期は新型コロナウィルスが猛威を振るう寸前。たった1回の授業を終えて、そのまま日本も緊急事態宣言下に突入してしまいました。その後は離れていてもできることを考えて、絵を通して文通のようなやりとりをしました。
そして2021年。ようやく対面で授業ができるようになり、小学1年生から6年生まで、各クラス1時間ずつ交流することができました。1、2年生は「たいせつにしているものを描く」3年生から6年生は「色と形で遊ぶ」。できる限り個性を大切にしました。どのクラスの子供たちも、目をキラキラさせながら前のめりで取り組んでくれました。
TURNフェスでは、コロナ禍前から試行錯誤してきた活動と、2021年の活動で生まれた作品の数々を時系列と共に展示します。

丸山素直

丸山素直
Sunao Maruyama

東京藝術大学デザイン科を卒業後、同大学院を修了。在学中にウィーン応用美術大学でグラフィックを学ぶ。空間を飾る絵画から洋服のテキスタイル、パッケージや広告などのイラスト、デザインも手がけている。作品には花や小鳥、動物など自然をモチーフにしたものが多く、優しく美しい作品づくりを心がけている。
またワークショップデザイナーとして、幅広い年齢層や環境に合わせた表現活動を企画している。美術やデザインの楽しさと重要性を伝えるべく、最近は国内外問わず、教育機関や病院などの福祉施設で活動している。
一方で、シンセサイザーバンド「CRYSTAL」のメンバーでもあり、2007年にフランスのinstitubesからデビューした。東京、パリ、ニューヨーク、マドリッドなどでも演奏活動を行い、主に海外からの人気を集めている。
東京藝術大学、お茶の水女子大学の非常勤講師。
http://sunao-maruyama.com/

エベレスト・インターナショナル・スクール
Everest International School, Japan

在日ネパール人の子供たちに、ネパール語と英語を話すことが可能な教育環境をつくり出すとともに、「母語や自国の文化も忘れてほしくない」という思いから、2013年に設立されたインターナショナルスクール。開校時は、15名であった生徒数は、約8年の月日を経て、現在約300人の生徒が東京都内外から通っている。ネパールのみならず、日本、パキスタン、バングラデシュなど、さまざまな国籍の子供たちの学びの場になっている。2015年2月にネパール政府より「世界で初めてのネパール人学校」として認定を受け、ネパールの教育指導要項に沿った教育を提供している。