岩田とも子

  • 参加作家・団体

遠くの地面を歩く

身近な自然物の観察・採集から宇宙的なサイクルを体感するような制作をするアーティストの岩田とも子。2020年から、TURN交流プログラムの一環として、多国籍の子供たちが通う保育園「ハーモニープリスクール」と交流しています。岩田と子供たちは、一人ひとりの目線で足元の地面をカメラに記録しました。写真を繋げていき、それぞれが歩いてきた痕跡を感じさせる新しい「地面」が生まれました。

岩田は2018年に交流した「富士清掃サービス」や、2019年に交流した「特別養護老人ホームグランアークみづほ」でも道や地面にまつわる活動を展開しています。今回、地面と向き合った私たちは、これから歩く道や過去の道、そして今同じ時を過ごしている遠いところにいる人の存在を思い馳せることになるかもしれません。


遠くの地面を歩く

なぜ私たちは地面にくっついているんだろう。片足ずつしか離せないし、ジャンプしたってすぐにくっついてしまう。私たちはそんな「近くの地面」を歩く。でも近すぎて無視することだってよくあるし、どこかへ向かうことで頭がいっぱいになって地面なんてよく見ていないかもしれない。

では「遠くの地面」だったらどうだろう、地面しかみえなくて周りのことは何もわからない「遠くの地面」を目にしたら、私たちはどんなふうにそこに立とうとして、どんなふうに歩こうとするんだろう。まずは遠くにいる人々から「遠くの地面」をもらうことにした。

地面が届くとそれはどれも不思議な引力をもっていて貴重な贈り物を受け取るようであった。そこでふと私が始めたことは「遠くの地面」を石ころのように小さく切りとってみることだった。それを紙に貼り付けてみるとちょっとずつ歩けそうな地面ができてきた。「遠くの地面」の持ち主たちも切りとった小さな地面を石ころのようだといって一緒に貼り付けた。石ころをひとつひとつ、一歩一歩、一緒に歩くかのようなその時間は、私たちの足元に新たに地面を描き出した。


岩田とも子

岩田とも子
Tomoko Iwata

1983年神奈川県出身。2008年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。
身近な自然物の観察・採集から宇宙的なサイクルを体感するような制作をするアーティスト。発表形態は多様で、2012年に畑を舞台に展開した「SILENT MIXER」、2014年に香川県粟島での自然物を採集するプロジェクト「粟島自然観察船」、その他自然学校の講師と共同で森の中で子どもワークショップを定期的に行う。生き物に対する素朴な視点、そこからはじまる学びと表現を大切にしている。

http://shizenkansatsu.net/