大西健太郎

  • 参加作家・団体

こもね座特別企画 『コレダ・レーダ』

アーティストの大西健太郎の主宰のもと、TURN LANDをともに展開してきた板橋区立小茂根福祉園とアーティストの宮田篤が、TURNフェス6に向けて映像作品を共同制作しました。

奇想天外なネーミングとともにさまざまな実験的な試みを展開してきた彼らは今回、「着る装置」としてのオリジナル衣装を身にまとい、日常を過ごしました。「二つの衣装が一つにつながった衣装」を着ると、二人の人がつながって行動することになります。「つながって散歩する」「つながってベンチでゆっくりする」「つながって屋上に出てみる」。異なる生活習慣やリズムをもつ者たちがパートナーとなることで、「利用者×大西」「スタッフ×利用者」など、他者と一緒にこれまでとは異なる「わたし」に変身します。ロケーション、場面設定、シナリオ、キャスティングの行程などは、利用者やスタッフの有志で構成されるこもね座職員と、宮田と大西が共同で取り組みます。

「これ、誰だ?」(=コレダ・レーダ)と思わず発したくなる「あなた」とも「わたし」ともつかない存在、あるいは「どちらでもない」存在の間を問いかけます。


「まだ、ワカラナイこと」を投げ出さない勇気

 ある人のコミュニケーション方法は、音声だが聞き取りが難しい言葉や、表情やジェスチャーのような非言語的な要素を多く含む場合がある。そのことを周りの人は知っていて、時々私のようにそれを知らない人が来るとフォローに立ち回ってくれる。小茂根福祉園の日常の風景だ。

 コミュニケーションが一対一にならず、大きな円を描くように、言葉、ジェスチャー、演技、笑いなど、さまざまな姿となって、人と人の間を飛び交っている。2016年にプロジェクトが始まって以来、主にパフォーマンス活動に取り組む「こもね座」は、多くの活動の中で「合いの手」に焦点をあててきた。

 彼らは、それぞれの人が持つ「特性」と向き合っている。毎日ルーティンのように変わらないこともあれば、日々変化すること、あるいは魅惑のベールに包まれたことも…一人ひとりの中にある「さまざまな」側面に目を向け、同時にそれらが移ろいゆくことを引き受けている。それは、「まだ、ワカラナイこと」と向き合い続ける力だ。そして、本作品の原動力となっている。

 本作品は、二人の人がつながって「着る装置」を身につけて、園の日常を過ごす時間を映し出す。二人(ないし、複数人)の動きが装置を通してかけ合わさり、「わたし/あなた」の境界が曖昧な存在(「これ、誰だ?」=コレダ・レーダ)となって映し出される。

 さまざまな姿(グラデーション)であらわれる「コレダ・レーダ」を目撃しよう。こもね座の身体に受信する一瞬一瞬の周波数とカメラを同期させることで、どんな風景が映し出されるだろう。


大西健太郎

 

大西健太郎
Kentaro Onishi

ダンサー。1985年生まれ。東京藝術大学大学院先端芸術表現科修了後、東京・谷中界隈を活動拠点とし、まち中でのダンス・パフォーマンスシリーズ「風」を開始する。その場所・ひと・習慣の魅力と出会い「こころがおどる」ことを求めつづけるパフォーマー。2011年に東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京と一般社団法人谷中のおかっての共催によるこども創作教室「ぐるぐるミックス」の立ち上げより、ファシリテーター、統括ディレクターを務める。2014年より「風と遊びの研究所」を開設。板橋区立小茂根福祉園にて他者との共同創作によってつくり出す参加型パフォーマンス「『お』ダンス プロジェクト」を展開。2018年南米エクアドルにて「TURN-LA TOLA」の参加アーティストとして、地域住民と共同パフォーマンス〈El Azabiro de La Tola〉の公演をおこなう。http://kentaronishi.wordpress.com